「やめてくれ……私はお前のおかげで独りではなかったのだから。レクシュがいてくれたからこそ、私は私でいられたのだ」

 私の思い出まで壊さないでくれ。

[グルル]

 我には関係無い。とでも言うように、その漆黒の獣は唸りを上げた。

 初めの標的であるベリルを見つめる。

「……」

 ベリルは剣を構え、ヘルハウンドを見据えた。

 風が舞い、魔獣は一気にベリルに飛びかかる。

「ウンディーネラ」

 そうつぶやいた途端、剣から水が走りヘルハウンドを包み込んだ。

[!?]

 剣を振り下ろすと魔獣は両断され、声もなく地面に転がった。

 そして、剣を支えに片膝をつくベリルにエオスは怪訝な表情を浮かべる。

「どうしてドラゴンの力を使わないの? そうすればもっと楽に倒せるものを」

 ベリルはそれに険しい目を向けた。