ジャックは息を吐きながらも、銃口は秋野に向けたままだ。

「あまりダメージはないところかしら」

しかし、血の流れからいえば、お互いに魔力も減り続けている。

そして、お互いの温度は下がり続ける。

「強い能力ね」

体温が下がりつつも平気な顔をしているが、秋野は心配する事が一つある。

体内にはもう一つの命がある。

母胎に影響が出れば、子供にも影響が起こる。

今、身体の状況が悪化しているのだ。

「もう、魔力が切れたのかしら?」

ジャックとて、体温が落ちているのはルールの上では同じである。

無駄な体力を使うまいと、しゃべる事もしない。

「あなたが妖魔を滅ぼせる可能性は、ゼロに近いわ。それを知った上で行動しているわけ?」

「まずはお前だ」

「やっと、声を聞かせてくれたわね」

秋野は笑う。

「私を殺せばミールオルディンの指揮系統の大元を失う事となる。そう考えているようだけど、それは違うわ。私はあくまで一つの枝でしかない」

ジャックはミールオルディンについて思考を働かせる。

ミールオルディンは、過去にも組織が存在していた。

秋野を殺せば、また次のミールオルディンが復活する可能性があるという事だ。

「全てを破壊する」

意思を崩さんとばかりに、引き金の指の力を込めようとする。

二人の温度はさらに下がっている。

いつしか、指も動かなくなってしまうだろう。

「そう、立派な主張ね」