「何故、私があなたを始末しなかったか」

無傷の秋野は一人で語る。

「あなたは厄介ではあるけれど、それだけ私を楽しませる要素がある」

秋野は笑う。

「目的に障害は付き物。だけど、それだけに達成感も大きい」

ジャックの頬には一筋の汗が流れる。

冷静になればなるほどに、相手の力の大きさがジャックには伝わってきた。

「私は、自分でも予想が付かないほどの達成感が欲しいの。今まで生きてきた中で得られないほどのエネルギーを得たいの」

ジャックはこのままでは決着が付かないと踏んだ。

今の状態では銃弾、爆弾の類は無意味である。

秋野の前にある防弾ガラスがジャックにそう告げている。

「ルール『弾丸はどんなものでも貫通する』」

新たなるルールを着用したところで、ジャックは動き始めようとする。

しかし、壁の向こう側から飛んでくるのは、さっき指定した弾丸。

人間の生身であるジャックは回避しきれず、腕に弾丸を叩き込まれる。

秋野も拳銃を所持していた。

ジャックは予想していなかったわけではない。

ただ、あまりにも正確に場所を把握していた事に、ミスをしたのだ。

「聞こえてるわよ」

ジャックは傷を気にする事無く、片腕を上げて応戦する。

弾丸は壁を貫通し、秋野に向って飛んでいく。

しかし、壁の向こう側を透視するという能力はない。

だからこそ、秋野は余裕をもって行動する事が出来た。