「で、あんたの願いって何よ?」

男は語らない。

「まだ怒ってんの?しょうがないなー、私が一から話して上げる」

女はため息をつきながら、自分の事を話す。

「私はロシアに住む妖魔のヤロスラヴァ=国崎。スラーヴカでいいよ。趣味はテニスに彼氏募集中。願いは不老かな」

スラーヴカは茶色の髪に青い目、露出度が高い服を着ている。

「不老?」

男は足を止め、振り返る。

「妖魔って、長寿とはいえ歳とってじいさんばあさんになるじゃない?私、耐えられなくてさ。死ぬのはいいんだけど、年食って醜くなるのは嫌なの」

二人は再び足を進めた。

「次は、あんたの事、聞かせてよ」

「ネロ、イギリスの妖魔だ」

ネロは黒髪に紅い瞳を持っている。

「願い事は?」

「これ以上、余計な事を言う必要はない」

感情の篭らない声を上げて足を止めず、アスファルトを進み続ける。

「ふうん、そんなに怪しい事なんだ」

スラーヴカは笑いを含みながらも、隣から離れない。

辿り着いたのは繁華街。

辺りには人間と妖魔が入り混じりながらも、歩いている。

「ちょっと、あそこ寄ってかない?」

指差したのはファーストフード店。

「やる事がある」

ネロにとって、仲間ではないスラーヴカのいう事を全く聞く気はない。