俺達は街中を歩く。

周囲は、相変わらず不穏な空気が漂っている。

どこに行ったとしても、空には黒い雲。

周囲には、目に見えるほどに霧のようなものが渦巻いている。

「ロベリア、こりゃいつからだ?」

「王子様が死んで、数日経ってから」

「そうか」

嫌な予感がするのは、気のせいではない。

これも、イヴァンが何かを起こしたせいなのだろうか。

しかし、どんな空気であれ、街の中は変わらない。

人と妖魔が歩いており、仲睦まじい光景がところどころにあるわけだ。

「アテは、ねえんだよな」

それが一番厄介だ。

イヴァンの仲間さえいれば楽なんだけど、そうそう現れるはずもない。

「しかし、くせえな」

霧のせいなのか、臭う。

「あなたの体から臭う死臭なんじゃないの?」

ジャスミンが鼻をつまみながら、手を振っている。

「おいおい、復活して間もないのに、もうちょっと労わりを持とうとは思わないのか?」

「姉さんの心を奪う奴は、敵よ、敵!」

そういいながら、ジャスミンはロベリアの胸に顔を埋めて匂いを吸う。

「本当、シスコンのレベルを超えてるよな。世間体を気にしろよ」

「世間体?何それ、美味しいの?」

「はあ」

頭をかいたところで、周囲の様子の変化に気付く。

「ほう」

街にいる妖魔達の目つきが鋭い物へと変化し始めたのだ。