女は患者の服を用意してくれる。

「これでも十分か」

「ちゃんと協力したんだから、セッティングしてよ」

「OKOK,分かってるよ。名前は?」

「神崎夕乃よ」

「じゃあ、神崎さん、後日改めてうかがわしてもらうぜ」

「期待しないで待っておくわ」

正直なところ、後日はないだろう。

しかし、神崎さんには感謝している以上、誰かに声をかけておくしかない。

俺は廊下を歩いている途中で鏡を見る。

「俺の体に戻ってきたのか」

確かに、映っていたのは俺の体である。

「都合がいいな」

他の姿の人間か妖魔ならば、説明に時間がかかる。

しかし、血の気がない顔をしている。

他の奴等が見たら何ていうだろうな。

外に出ると、黒い雲が世界を覆っていた。

「時間がない、か」

イヴァンの力が増しているとでもいうのか。

俺は急いで家の近くまで走っていく。

人気はあまりない。

「ち、学校からじゃ龍姫の場所にいけねえ」

転移陣が破壊されている以上、こちらから働きかける事は出来ない。

「王子、様?」

背後から声をかけてきたのは、ブロンドの髪の持ち主であるロベリアだった。

ロベリアは買い物の袋を持って、立っている。

「ただいま」

手を挙げ、ロベリアに挨拶をする。