「やるしかないのなら、やろう」

「丞」

「千鶴が死ぬわけじゃない。だから、俺の出来る範囲で徹底的に千鶴を死守する」

俺の大事な妹で、守るべき女でもある。

「吟、すまねえな」

頬をかきながら、苦笑いする。

「私が好きでするんだ」

「俺は、お前がいてくれて良かったと思う」

「私は、お前がいなくちゃ駄目なんだ」

「そうか」

俺は吟を抱きしめる。

「これも、好きって行動か?」

「そうだ」

吟も俺を抱きしめる。

「私には思い出がない。でも、お前に好きという行動を取られると、私は不思議な気持ちになる」

「そうか」

「多分、お前の好きっていう気持ちなんだろうと思う」

「そうだといいな」

郁乃母さんから冷たい視線を受けながら、俺は吟を離す。

自分の母親と息子が愛の抱擁なんていやだろうな。

でも、俺は吟が好きだから仕方がない。

いや、そうじゃない。

千鶴にも手を出しておいて、何やってんねんという話なんだろう。

でも、今解決する話ではない。

「じゃあ、やるか」

龍王の指示に従い、郁乃母さんと吟は俺の両肩に手を置く。

「制限時間は四十八時間、分かったな?」

「それまでに俺はイヴァンの動きを止めて、千鶴にやらせればいいんだな」

「姫の力も使え。アヤツは、お前にホの字じゃからのう」

「認めてないんだろ?」

「当たり前じゃ、しかし、四の五の言っておる場合ではない」

「だよな」