「ちょ、ちょ、ちょっと、待って、何で、何でだ?」

「何をそんなに驚いてるでしょう?」

目の前の人は地上の私服姿であり、悠然とした態度で俺達を見ている。

「郁乃母さん、俺」

心の中でしかあったことのない母さん。

こみ上げてくるものが沢山あった。

「そんな目も、あの人にそっくりでしょう」

仕方のないような顔になり、俺の頭を撫でる。

「お前は、誰だ?」

「母さん、あなたは丞に話を聞かなかったのでしょうか?」

「母さん?私が?お前の?」

吟は郁乃母さんの事を警戒しているようだ。

「本当、記憶がなくなっているのは確かのようでしょう」

「何で、郁乃母さんは俺達の記憶が?」

「私がここよりも上に辿り着いた存在だからでしょう」

「上?」

「そう、極楽という場所でしょう」

郁乃母さんなら、行ってもおかしくなさそうな感じである。

「吟よ、何年ぶりじゃ?」

隣には、歳を食った爺さんがいるようだ。

和服姿で妙な威圧感をかもし出している。

「生き物は儚いのう。ワシとお前でさえ、こうやって死に追いやられるのだからなあ」

爺さんは長い眉毛と髭で、表情が解らない。

「それで、こっちは」

「葉桜、丞だ」

「おお、吟の子孫か。お前のやらかした事は色々と聞いておる」

何故か、怒っているように見えるのは気のせいか?

「丞、一言謝っておいた方が、身のためでしょう?」

「な、何でだ?」

「それは」