「と、言うわけだ」

俺は長々と話し続けた。

吟は表情を変える事無く、聞いていたわけだ。

いつも通りの吟といえば、吟だ。

本当に記憶がなくなっているのかとさえ思う。

死者が襲ってくることもあった。

しかし、意思のない者に負けるほど弱くはない。

それに、疲労も特にない。

「それが私か?」

「嘘じゃない」

俺は吟の瞳を見つめた。

金色の瞳は、俺の瞳を射抜く。

いつみても、美しいと思える。

「信じられないな」

「記憶がなけりゃ、何を言ってもそうなっちまうよな」

「私がそんな楽しそうな生き方をしていたなんてな」

「楽しい、か?」

でも、吟は俺達のために犠牲になってしまった。

それでも、今の吟は楽しいと言う。

本当の気持ちなんだろうか。

「この世界も悪くはないが、興味はある」

吟は空を見上げる。

空といっても、雲があるわけでも太陽があるわけでもない。

「でも、ここには、お前の言っていた他の奴等はいない」

「まあな」

俺と吟以外、知っている奴はいない。

そう、いないんだ。

「全く、あなたは馬鹿でしょう」

「え?」

後ろに立っていたのは、見知った人物だった。