「一匹の妖魔をリンチするのが、保守派って奴のやり方?」

「残念だが、外部の敵に容赦をする気はない」

いつも以上に、道元の周囲の空気は重苦しい。

「クルト、大丈夫?」

美咲はクルトの傍に寄った。

「まだ、終わっちゃいないだ」

苦しい声を上げながらも、皆に危険を知らせようとする。

「え?」

そして、皆の足元が崩れる。

「バイバーイ」

姉は笑い顔を浮かべながらの地の中へと落ちていく。

道元と冴子は飛びのき、美咲はクルトを抱えながら場所を移動した。

近くの広場。

クルトは荒い息をしながらも、苦しんでいる。

「オラの、せいだ」

「説明するのは、後ね」

毒を回復させるために、手の甲へとキスをした。

すると、クルトの顔色は少しずつ良くなっていく。

「すまね」

「いいんだよ、クルトも里のために働いてるからね」

毒を治療した美咲の魔力は、三分の一程度は減っていた。

それだけ、毒の威力は高かったという事である。

「姉の傍の地下には、オラが穴を開けた場所があっただ」

「じゃあ、お姉さんはそれを見越して、あの位置にいたのかな?」

「それは、偶然だ。穴を掘っていたのは知っていたが、アンタ達が登場した事には、驚いていただ」

「悪運が、強いね」

「オラの姉だ、ただでは、捕まらね」

再び現れるであろう姉の事を考えるクルトであった。