右から来た刃を体勢を低くしながら潜り抜け、回避する。

「ふうん、普通の妖魔じゃないんだ?」

「普通って、何よ?」

先輩はあっという間に、距離を縮めた。

そして、至近距離から御弾きを親指で弾き出す。

姉は吹っ飛ばされるかのように、後方へ飛んだ。

「人の事、言えないわよね、それ」

姉は長い舌で御弾きを受け止めていた。

そして、御弾きを舌で絡め取り、口に含む。

「マズ」

姉は御弾きを吐き出す。

「唾液をクッションにして受け止めたってところかしら?」

「やっぱり、私とクルトの話をちゃんと聞いてたんじゃない」

姉の余裕さ加減が変わる事はない。

「でも、本当、楽しいわあ」

「君の楽しさを満たすためだけに、人員を割くわけにはいかない」

今のは、クルトでも先輩でもない声である。

「え?」

上から何かが降ってきて潰されたかのように、姉は地面へと叩きつけられる。

「何よ、これ?」

急に起こった事態に、姉は対応しきれずにいた。

少し離れた位置に立っていたのは、保守派の上層部にいる笹原道元であった。

傍には、道元の傍には笹原美咲の姿もある。

「里での行動は常に監視されている。君がクルト君と冴子君の相手に気を取られている間に私達はここに来る事が出来た」

「道元様、私はまだ何もしてませんけど?」

先輩もとい、冴子は拍子抜けしたかのような表情でいた。

「事態を早急に被害なく治める事こそが、保守派の使命だ」

「はあ」

冴子もストレスの発散を行おうとしていただけあって、少し残念な部分はあった。