見た目は歳を取った風ではあるが、革ジャンにジーパンという若い出で立ちである。

「そう」

冬狐はコーヒーを飲み終える。

「それより、成長したのう」

何かを掴むような仕草を両手で行う。

「ふうん、揉む?」

「お、何と!胸も器も大きいのう」

近づく靜丞。

しかし、間近くに来たところで肘鉄が靜丞の頭を捉えた。

「ご!」

「嘘よ」

頭を摩りながら、体勢を立て直す。

「祖父でも容赦せんとは、凶暴さは変わらずじゃな」

「本当、孫とそっくりね」

冬狐は微笑を浮かべる。

「冬狐ちゃんも思い出しておったのか」

「まあね」

二人して海を眺め、思いに耽る。

「冬狐ちゃんは、小僧の事をどう思う?」

海から目線を靜丞に移す。

「あの馬鹿は、美咲を救ったわ。それだけは評価してもいいところね」

「少し認めているというわけか」

「そうかもしれない」

「素直じゃな」

「どうかしら?」

「今回の件に関しても、小僧がどうにかするものじゃと思っておったがのう」

「もう、美咲を救うことも、ないわね」

「そうじゃな」

再び波立たぬ海へと視線を変えた。