ジャックは森林の中を歩いていた。

森林は聖域のように静かで、人っ子一人歩いていない。

兎にも角にも、ジャックには不似合いであった。

ジャックは無言で、共に契約妖魔の女も無言。

その光景は、いつもの事だった。

しかし、ジャックの心境は一つ違っていた。

理由は簡単だ。

自分を地の底へと叩きつけた女の所在が分かったからだ。

だからといって、油断はしていない。

油断は、全てを破壊する。

ジャックに三度目の失敗はない。

相手はジャックと同等のトップクラスの実力の持ち主。

数は月とスッポン。

一人で挑むには、些か難しさがあった。

しかし、ジャックには余裕すらある。

例え相手が同じチューナーであろうと、妖魔であろうと、潜り抜ける自身はあったのだ。

そう、ミッションをコンプリートする事が全て。

『西、300。東、200』

女は囁くようにジャックに告げた。

「『ルール』敵意の指定先、認識不能」

ジャックは再び戦域を歩き続ける。

しかし、戦域とは程遠いほどに静かであった。

弾丸が飛び交う事はない。

そして、敵地にある罠を女の囁きによって回避しながら、基地へと徐々に近寄っていく。

しかし、当然ながら、ジャックにも敵の姿は見えない。

敵味方に関係なく強いられる能力。

それが『ルール』なのだ。