「ミールオルディンさーん」

すぐにでも発砲できるよう、トリガーに指をかけている。

銃口の先にはサイレンサーがついている。

「何のこと?」

「口頭でとぼけてもいいわーん。でも、ここ数日であなたがミールオルディンだという情報と証拠はあるんだしねーん」

懐から取り出したテープレコーダーから聞こえてくるのは、秋野湊と売店のおばちゃんのやり取りだった。

「盗聴」

「そういう事なのよーん。で、今から言わなければ、あんたは余生を過ごす事なくバイバイビーンだわーさ」

「何が、目的?」

死ぬかもしれないという状況なのに、落ち着いていた。

「ちょっとした情報が欲しいのよねーん」

「言うとでも」

「貴方達のボスの居場所はどこかしらーん?」

「知らない」

「組織のために生きる、素晴らしい心がけねーん。でも、あんたにも家族はいるのよねーん?どこにいるのーん?」

「知らない」

「ご立派ねーん」

トリガーを引き、おばさんの頭を打ち抜いた。

「一人で死ぬ道を選ぶなんてねーん」

周囲には人はいない。

何もなかったかのように、ロックは歩き出した。

再び電話をかけなおす。

「こっちは駄目だったみたーい。え?隊長の方はいけたのーん。そう、分かったわーん。まあ、気をつけてねーん」

携帯を懐へと収めた。

『君は嘘つきだ』

「そうかしらーん?」

『今のも不意打ちだ』

「細かい事はいいじゃなーい。じゃあ、まだ仕事はあるしーん、行くわよーん」

ロックは次なる仕事場へと急いだ。