「今度は私があなたの幸せを奪う」

悲鳴が終わり、覚悟の声を上げた。

狙いを定め、腕から塊が砲弾の如く飛び出る。

南西へと駆け抜ける砲弾。

その先にはビルがあり、窓を打ち抜いて内部へと突入する。

弾丸が内部へ入ろうとした瞬間、何かが光ったようにも見えた。

「どう?」

周囲の黒い影は、まだ消えない。

「次、早くしろ」

「ちょっと、待ってよ。負担がかかるのは千鶴なの」

再び、光がビルを貫く。

すると、黒い影は消えた。

「何が起こった?」

「解らない。でも、助かったのは確か」

俺は、光が飛んできた方角を見る。

だが、遠すぎてよくは見えない。

周囲の人間達がざわめき始めた。

笹原妹がビルから、地上へと降り立つ。

「けが人の治療をします!すいません!通してください!」

人間達がいるのにも関わらず、自分の力を披露する。

いや、それ以前に、葉桜妹の体を借りた女によって、周囲から怪訝の眼差しで見られているのは確かだ。

「ち、見てんじゃねえ。殺すぞ?」

関わる事も面倒くさい。

俺は歩き始める。

一体、誰がやったのかは解らない。

他にも探している奴等がいるとでもいうのか。

だが、これで再び手がかりが消えてしまったのは確かだ。

「ち」

非常に面倒くせえ。