イヴァンと融合してからの記憶はない。

しかし、俺は吟に引き抜かれて、再び自分の足で立つ事となった。

「分かってるのは、目の前のアレがとっても弱ってるって事くらいか」

女の格好をした者が膝をつきながら、苦しみの声を上げている。

「俺が倒すっていっても、出来るのかよ?」

「不完全アルからな。お前に出来る技なら、問題ないアルよ」

「そうか」

俺は両腕に闇と光の力を作り出し、両手を合わせる。

目の前にあるのはカオスだ。

「これで、最後か」

「ま、て」

女から男の声が発せられる。

それは聞き覚えがあった。

「イヴァンか」

「ここでボクを消せば、その女も同時に消える」

俺は吟を見る。

「私は、私の自我を持ってして長く生きた。思い残す事もない」

もし、体の全てが消えるというのなら、一部だけが世界に残るという事はないのだろう。

「イヴァン」

俺はカオスを投げる構えを取る。

「ここでよ、吟と別れたくないだの何だの言うつもりはない。俺は、吟の守りたいものを守る」

吟の守りたいもの。

それは、俺を含め、自分の大切な者達だ。