歩きながらも、考える。

イヴァン=カナシュートという男がどこにいるのか。

一方では、イヴァンとの部下と交戦していたという情報を得た。

しかし、その後に敵を逃した。

何を考えているのか、俺の理解には及ばない。

「ち、面倒くせえ」

周囲には人が歩いている。

街中であるから、当たり前の事だ。

しかし、どこに手がかりがある?

「結界で覆われた世界でいるのか」

空を見上げたところで、何が変わるわけもなし。

「原始人、暇そうね」

車のウィンドウを開けた先には冬狐がいた。

先ほどまで止まっていなかったので、今来たのだろう。

「暇に見えるか?」

俺も足を止める。

「まるでクロマニヨン人が街を我が物顔で歩いてるようだったわ」

「クロマニヨン人が言語を喋る事が出来るとでも思ってるのかよ?」

「そんな事はどうでもいいわ。これ、上げる」

俺の手の上には噛んでいたガムをくっ付ける。

「あんた、お腹空いてるでしょ?」

「ああ?俺は乞食か?テメー、ぶっ殺すぞ?」

「ついでにコレもあげるわ」

再び、俺の手に置かれたのはジュースの缶だ。

「ま、試作品だから、使ったらどうなるかは解らないわ」

「テメーは俺をイラつかせるために、現れたのか?ああ?」

顔面を近づかせたが、冬狐の表情は変わらない。

そして、俺は窓と車の天井に顔を挟まれる。

「ぐお!」

「じゃ、あんたを特別にドライブに招待してあげる」

顔を挟まれたまま、車と平行に走らされる事になった。