すでに上着を着用した蛍は霧の中から誰かの腕に引っ張られる。

そのまま部屋から出て、廊下へと導かれた。

「お前さん、か」

その際にいるのは服を着込んだスラーヴカだ。

二人は走りながらも出口へと向っていた。

「くだらない死に方されても、こっちとしても気が治まらない」

「じゃあ、お前が殺せばいいんじゃないか?」

半笑いになりながら、スラーヴカを挑発する。

「お前さんはそのためにここに来たんだろ?」

「知ってたんじゃない」

「それは手段であって目的ではない、そんなところだろう?」

「やな奴」

「褒め言葉としてとっておこうか」

「いいけど、ね」

「そうかそうか。なら、もう一発」

「それはしない」

「お前さん、目的を果たさず帰るつもりか?」

「帰っても、ろくでもない目に合うのは予想できる。でも、私はあんた達の仲間じゃない」

「だろうな」

「また、狙いに来るわよ?」

「じゃあ、その時はもう一回戦だな」

「やな奴」

スラーヴカは自分の顔を隠すかのようにそっぽを向いた。

そして、蛍はホテルからしばらく歩いたところで足を止める。

「お前さんは、早く自分の価値に気付くべきだ。俺から言えるのはそれだけさ」

しかし、スラーヴカは振り返る事無く、去っていく。

蛍はスラーヴカの背中を見つめながらも、洋子の対処法について考えていた。