イヴァンが腕を上げようとしたところで、俺はサイドステップで回避する。

「ここは僕の世界だ。この手の先にいなくても成立することがある」

「何?」

俺の体から、何かが引き出される。

「馬鹿な」

そこにいたのは、吟と龍王の二人だった。

吟は自分の記憶の中にある服装で現れる。

吟は俺と旅の時の服装だ。

龍王は着物を着ているが修羅界で見た時と年齢は変わらない。

「また、丞の顔を見る事になるなんてアルな」

「吟、お前、記憶が」

話し方からして、過去の物になっていた。

今、吟の顔を見れたのは正直嬉しい。

だが、今現れるという事は、完成の手助けをするという事になる。

「少々、まずい事になっているようじゃのう」

龍王は理解が早い。

「だが、俺達は奴を止めるしかない」

何のための肉体を失い、何のためにイヴァンの世界に来たのか。

「精神の均衡を起こしている今、ここで飲み込まれれば完全に消滅するといっていい」

「だが、その逆も然り、だろ?」

「可能ではあるが、可能性は低い」

「原初なる者の多さからいえば、向こうが上だからって事か?」

「そして、ここは奴の世界じゃ」

「そう、不可能な事などほとんどないという事だ」

イヴァンがそういい、片手を龍王へと向けた。

「ぐ」

龍王が膝を着き、イヴァンを見据えた。