「ボクにとって姉の存在は全てだったといえる。いや、両親もそうだ」

「お前の話を聞くつもりはない」

俺は構える。

「だが、向こう側にとっては、そうでもない。お互いの気持ちが比例する事はない。それが真理だ」

「決め付けようとするな」

「人の物を奪った者の言う事ではない」

「それは認める。だがよ、お前はもっと人の物を奪ってるって事に対してのお咎めはなしなのか?」

「破壊と新生。その言葉の意味する事を理解できないわけでもないだろう」

「原初なる者なら出来るってか?」

「最初は君の妹を使おうかと思ったが君に邪魔されてね」

「何の説明もなしで千鶴を拉致しようとしたんだ。邪魔するに決まってるだろう」

説明したところで、邪魔するのは当然の事だったがな。

「だが、最終段階まで到達した」

「最終段階って事はまだ完全にはなっていないという事だろ」

「ふ、君が僕の意識に入った事により、完成も後一歩だ」

ここで思考を止めるな。

俺という一個体が目的ではない。

だとしたら、殺さずに最初から肉体と精神を侵食させる。

じゃあ、俺の中にある俺ではない何かだ。

「そうか。お前の中にいる原初なる者の完成か」

「理解したか?」

「俺がさせると思うか?」

「君の意見など関係ないね」