「まあ、待て」

両手を挙げながらも、蛍の余裕を失わない。

「何?」

「その引き金を引くという事は、お前さんと俺は終わりって事だ」

「そうだ」

「お前は、それが出来る女か?」

半ば、睨みつけるように蛍は洋子を見る。

「ちょっとあんた、何よ?」

隣から出てこようとしたスラーヴカに拳銃を向ける。

「動くな。今は私と蛍の話し合いの途中だ」

「ふざけないでよ。私もこいつの被害にあってんの」

「まあまあ、そんなに怒るなと何度言えば」

「誰のせいで、こんな事になってると思ってるんだ?」

空いた片手にも拳銃は握られている。

「やだ、嫉妬に狂う女って、醜い」

「私は嫉妬深さも自分の一つだと自覚している。お前にとやかく言われようが関係ない」

撃鉄を上げる。

「ふう」

いつの間にか、タバコを吸っている蛍。

「お前さんがそういうのなら撃てばいい」

「随分と潔いんだな」

蛍の出方を伺っている洋子は、心情を読めないでいる。

「どうかな?」

「終わり」

その時、スラーヴカの能力が発動し、部屋全体が霧に包まれる。

自分の傍にいるはずなのに、誰しもが位置を掴めなくなった。