「アカ・マナフ、琴、あんた達はクルトを連れてきなさい」

子鉄は何を言っているのか。

一人で、イヴァンと戦うつもりなのか。

俺が声を上げようとしても、鉄球故に届かない。

「おや、私に死地から離れろというのですか?」

「向こう側は、もう暴走妖魔であふれかえってるはずよ」

まさか、久遠や冬狐も暴走してしまっているというのか。

「琴は転移術を使える。あんたは戦術に長けている」

しかし、琴には負担が大きすぎる。

それは、子鉄も知っているはずだ。

しかし、今、転移術を使える妖魔は琴しかいない。

龍姫はすでに体力と魔力を使い果たしてしまっている。

「あんたは空気を読めない奴だけど、最低限の最優先するべき事を知っているわ」

「おやおや、あなたから高評価をいただけるとは、今日はお汁粉付のめざしパーティーになるかもしれませんね」

「そのめざしを作る奴がいるって事を忘れてんじゃないわよ」

アカ・マナフは少し黙る。

「今晩のめざし料理も逃せませんね」

そして、アカ・マナフは背中を向ける。

「丞ちゃんと離れ離れになるにゃ?」

目をさましている琴が子鉄に問いかける。

「ここであんたは動かなければ、永遠の別れになるわね。それでもいいのなら、ここに残りなさい」

「嫌にゃ!そんな不幸な世界はいらないにゃ!」

琴は子鉄から離れて、魔方陣を描き始める。

「子鉄さん」

今まで黙っていた千鶴が、首を下げながら子鉄を見ている。

「千鶴、あんたは下がってなさい」

「でも」

「あんたは、本当に、最後の希望。今、むやみやたらに動かすわけにはいかないのよ」