ちなみに、クルトは気が付いていたので呼んでいる。

起きた時には悔しそうな顔をしていたが、慰めている暇はない。

「お前達は白い女を止めておいてくれ」

「あの方にめざしの素晴らしさをお伝えできるのですね」

「それで止められるのなら、勝手にやってくれ」

あの女に鉄球の一撃を止められれば、終了する。

チャンスは一度だ。

「クルト、お前も頼んだぞ」

「オラは、オラには、出来ないだ」

涙ぐんだ顔を見せながら、否定をあらわす。

「そうか。分かった」

俺も無理を言うつもりはない。

ここまでやったのも良い方だ。

「じゃあ、お前は夢魔と一緒に隠れてるんだ。いいな?」

クルトは俯いたまま、顔を上げない。

「丞ちゃん、琴は何をすればいいかにゃ?」

「そうだなあ。お前も隠れて」

琴は涙を流しながら、こちらを見ている。

「丞ちゃんは琴にお仕事させてくれないにゃ、不幸」

「分かった分かった」

幸運・不幸の能力が発動するまえにネガティブから解放さないと無駄に時間がかかる。

「そうだな。お前も来るか?」

「にゃ!」

頷きながら、俺の頭の上に再び乗る。

頭が重いが、気にせず進むのがいいだろう。