「今の俺では近づく事すらままならない」

俺の体はボロボロで、近づく前に壊されて終わる。

「だから、お前の鉄球を奴にぶつけて欲しい」

「ちょっと待ちなさい。鉄球をぶつけたところで奴の動きを止められるはずがないわ」

「そうだ。鉄球だけでは止まらない」

「じゃあ、どうするっていうわけ?」

「俺の意思を鉄球に込める」

「意思を?」

「母さんは俺の体の中に意思を残した。それを鉄球バージョンで、俺がやる」

「そんな事出来るわけ?」

「有機物と無機物の違いはあるけど、今の俺にはその方法しか思いつかない。それに、他の物を用意する時間もない。一番確立の高い方法はそこにある」

母さんの力が宿っている今なら、出来ない事もないだろう。

いや、敵は原初だ。

母さんの闇の力だけでは奴を打ち抜く事は出来ないかもしれない。

念には念をこめておいたほうがいいかもしれないな。

「俺はお前を信じてるぜ」

「あたしはあんたを信じられなくなってきたけどね」

「そう言うなよ」

子鉄が俺のほうに鉄球を軽く投げる。

俺はアカ・マナフが作った鉄の腕で受け取った。

「そうね。あんたと千鶴にかかってるっていうなら、あんたの思い通りにやりなさい。私はあんたに従うわ」

「ああ」

俺達は世界の裂け目から少し離れた位置まで来る。

「アカ・マナフ、クルト」

「何だ?」

「おや、体育の時間がやってきましたか」