とあるビルの屋上に座りながら、病院を見下ろす男。

男は改革派であり、葉桜丞を倒すという目的があった。

名前は犬神刃。

先日まで力を封印されていたリングを付けていたが、今は呪縛から解放されている。

しかし、リングを外すには条件があった。

それは、イヴァン=カナシュートの調査ないし破壊。

リングを外した後に、秋野湊を殺しに行くという目的を達成する事も出来た。

しかし、刃は葉桜という眼前の目的を潰された事に、苛立ちを感じていたのだ。

「人間は弱えな」

風に吹かれながら、妖魔と人間との差を考え始めていた。

秋野が言っていた、人間が弱い故に新しい物を作るという言葉も解らないでもなかったのだ。

何故ならば、刃自身がそれを体験したからだ。

リングをはめられている期間、刃は人間としての生活を余儀なくされていた。

妖魔なら出来たことを人間では出来ず、狼狽する毎日を送る。

しかし、その間に人間達に手助けされ、刃の心にも人間に対する考え方が少しながらにも変わった。

弱いからこそより多くの物を欲し、自分を守ろうとする。

何もない状態では、すぐに死んでしまう。

それは、何となく理解した。

だが、全てを許したわけではない。

根本的に、いつかは滅ぼすべき相手だという認識は消えては無かった。

刃は立ち上がり、ビルからビルへと飛んでいく。