「私は大丈夫。今は千鶴ちゃんを気遣ってあげて」

俺の心を見透かしているかのような台詞だ。

確かに、戦闘に慣れているのは美咲であり、今の場所に来る事の確認も千鶴本人にはしていない。

ジャスミンが異世界にいるという事は千鶴はOKを出したという事に他ならないが、ちゃんと聞いておかなければならない。

「ジャスミン、千鶴は起きてるか?」

「起きてるんじゃない」

そっぽを向いて、不機嫌そうな声を上げる。

多少ではあるが、ロベリアの事は落ち着いたらしい。

「ジャスミンが良いのなら変わってくれないか?」

ジャスミンは無言のままにこちらを向いたままだ。

しばらくすると、鎧が脱げてパジャマ姿の千鶴が姿を現した。

「千鶴」

「兄さん」

「お前に言っておきたい事がある」

「何?」

「お前の意見を聞かずに、ここに連れてきた事について謝りたいんだ」

千鶴は首を振った。

「ここにいるのは私の意志だよ。眠っている間とはいえ、ジャスミンにはいいと伝えておいたの」

「ああ」

「兄さん、私がやらなくちゃ、他のみんなが辛い目に遭うんだよね?」

「自分の意思では選択できないような出来事が起こるかもしれない」

「ずっと考えても状況は変わらない。私一人が泣いてる場合じゃない、そう思ったんだ」

「いけるか?」

「うん」

「千鶴」

「うん?」

「俺の体が朽ちるまで、お前を守るよ」

俺の意思は最初から変わらない。

「私もね」

俺の隣から美咲が顔を出した。