「しかし、暗闇の中を歩くのも、オツなものですね」

肝試しをすれば、驚く人の一人や二人はいるのではないでしょうか。

「あんたのオツムは足りないと思うけどね」

「足りない物は互いに補う事こそが、いい塩梅だと思うんですよね」

「あんたが、まともな事を言うと気味が悪いわ」

「怪談の語り部として役に立てるかもしれませんね」

野川さんが恐怖してくれるのならば、他の人にも適用できるかもしれません。

怪談の訓練でもしておくのもいいですね。

歩き続けると、少しずつ明かりが見えてきました。

「案外、早かったわね」

「おや、幼少の冒険心を再び味わうのもいいと思ったんですがね」

「冒険をしてる暇はなさそうよ」

光の向こうで見た物は、大きな空間でしょうか。

病院のように白く塗りつぶされた、落ち着きのある場所といえましょう。

こんな場所で住まいを築く人は、さぞ美味しいめざし料理を開発するに違いありません。

しかし、周囲には何もありません。

ただ、数メートル先に、人が居るのを除いてはの話ですがね。

「姿を見るのは、久々ね」

白い服に包まれた方は野川さんだけでなく、私にも関わった事がある方でした。

「我は神の御心のままに動く」

風間さんは静かに構えます。

鈍い私にも分かる事が一つありますね。

彼は敵意というものを、私達に向けているようですよ。

「風間、退魔師だったあんたが何でそっち側についている理由を聞きたいわね」

「神が降臨するのならば、我はこちらに就くのみ」

「単純明快ね。でも、それは本当に神なの?」

「今の状況を救える神だ」

信仰心の強い風間さんは神の存在を否定しません。

確かに、この先にいる方ならば、世界の霧を晴らす事も出来るかもしれません。

しかし、神に匹敵するほどの力を持っていたとしても、決して神ではないですね。

それは、何年も前から私が結論付けた答えです。