暗闇を何分歩いたか。

それは俺もクルトも分ってはいないだろう。

ずっと同じ場所をさまよっているのではないかという感覚。

抜け出せない闇。

敵側の世界だけあって、面倒な仕組みである。

クルトも相変わらず前を歩いているがペースが落ちている。

「ち」

周囲に何かしらの仕掛けがあるのか。

ずっと、まっすぐ歩いてはいるが、本当に正解なのか。

本当は左右に道があって、そこが正解なのではないのか。

そんな気持ちが沸いて出る。

弱気になっているつもりはない。

しかし、このままでは体力だけが消耗する。

「おい、一度しかいわねえ。止まれ」

俺の声が聞こえているのか。

クルトの距離は変わらない。

要は足を止めたという事だ。

「何だ?」

少し離れた位置から、クルトの声が聞こえてきた。

「歩いて、結構な時間が経っている」

「それがどうしただ?」

何も考えずに歩いていたのか。

この先に答えがあるのかすら分っていないというのにな。

「そして、ここは敵陣だ。それがどういう意味か分るか?」

「進めば敵がいるという事だ」

「テメエは馬鹿か!頭を働かせろ!」

間違いではないが、敵の居る場所に永遠に辿り着けないかもしれないという事だ。

「うるさいだ!オラは進むだ!」