「じゃあな」

いつまでも構っている暇はない。

俺達にはやるべき事があるのだ。

「おや、私もピクニックに参加させていただいてもよろしいですかな?」

「お前、人の話を聞いてないのか?」

「ピクニックを否定された記憶はないんですよね」

いつまでも付きまとわれるのも嫌だな。

以前は助けてもらった。

それは感謝すべきだが、今回は危険度はさらに上がっている。

「俺らは、呑気にピクニックしてる場合じゃねえんだよ」

掻い摘んで状況を話す。

「それは死地に辿り着けるかもしれないという話ですね」

蛇のようないやらしい目に変化する。

「まだそんな事を言ってるのか」

「おやおや、私の生きている意味は死地にいかに辿り着くかですよ」

「お前の考えは分ったが、摩耶はどうするんだよ?」

「おや、摩耶さんの心配をしてくれるとは、葉桜君はやはり摩耶さんの旦那さんにふさわしいですね」

「漫才をしてる場合じゃねえんだよ」

クルトの苛立ちが表情に表れているようだ。

「パパ、ウチの事はええで、行ってき」

「おや、摩耶さんの理解力に感動せずにはいられませんね」

感動のかの字もお前には似合わないんだがな。

「という事で、私もご一緒させていただきますよ」

人の事よりも、自分の欲求を満たすとはな。

絶対的に拒否して時間をかけている場合でもない。

「ち、行くぞ」

「摩耶さん、葵さんとマリアさんに私のめざし料理を分けておいてください」

「何言ってるん。パパは絶対帰ってくるんや!」

「おやおや、あなたの帰省本能を揺るがす台詞に揺さぶられますね」