自分の世界に戻った瞬間、前は何も見えない。

それほどに霧が濃くなっているという事だ。

「まずいな」

早く辿り着かなければ、邪魔が入るかもしれない。

邪魔というのは街にいる妖魔の事だ。

退魔師がどうにかしたといっても、全てじゃないはずだ。

街に増えた妖魔は、数え切れないはずだしな。

透視能力を発動させると、霧は関係なく前が見えるようになる。

傍には、ロベリア、ジャスミン、クルトが居るようだ。

道具のおかげか、クルトは何の影響も受けていない。

「クルト、体調はどうだ?」

「何も変わらないだ」

「それは良かった」

俺達は再びあの場所に向かう。

その途中だっただろうか。

「パパー!すごいで!前、何も見えへんで!」

状況が見えていない元気な声が聞こえてくる。

「この霧を食べる事で幾日か生きていけそうですね」

お前は一体、どれだけ貧乏なんだ。

「おや、この気配は葉桜君じゃないですか?」

アホ・マナフが摩耶を連れて近寄ってくる。

「気配で分るとか、どれだけ達人なんだ」

「これからピクニックですか?」

「俺らの顔がそんなに楽しそうに見えるかよ?」

「ピクニックついでに熊さんでも狩るのかと思いましたよ」

「ついでに修羅場を生み出すピクニックってどんなんだよ」

いつまでたっても、アホ・マナフは空気が読めていないようだ。