妖魔06~晴嵐~

俺は子鉄と対面に座り、いきさつを全て話した。

子鉄が記憶を失う前の事も全てだ。

何時間が経ったのかは分らない。

信じているのかも分らないが、子鉄はずっと聞いていた。

「そう」

感情を見せないところが、少し怖くもあった。

「通りで、既視感があったわけね」

記憶がなくとも、記録と感覚だけが残る能力だったからな。

能力的にはかなり中途半端だったんだ。

「以前の世界での丞ちゃんはアタシを裏切ったってところ、か」

「そうだ」

「それに関してとやかくは言わないわ。ただ、何で話してくれなかったの?」

「今いる知り合いで、何とかしようとしていた」

「アタシが役に立たないと、思った?」

「子鉄は強い。以前の世界の子鉄よりもずっとな。信用も出来ると思う。でも、心のどこかで怖かったんだ。二度も子鉄を失う事が」

あの時、俺はチェリーを抱えて逃げた。

もし逃げなければ、今に至ることは出来なかったけどな。

「そう」

子鉄がため息をつく。

「ここまで来るのが、遅いわよ」

力強いデコピンが俺の額を捉えた。

しかし、痛みはない。

「本当に、丞ちゃんは死んでる状態なのね」

「後戻りは出来ないような体だな」

「いたぶりがいがないわ」

「いたぶる必要なんかないだろ」

「今までのアンタの行動のツケを払わせようと思ったんだけどね」

「そういわれると、すまない」

「謝ることが全てじゃないのよ」