妖魔06~晴嵐~

「付いて来い」

俺は歩き始める。

子鉄は瑠璃子を丸のおっさんの下へと帰し、一人俺の後を追う。

「帰したのか」

「今のあの子は危ういからね」

「そうだな」

自発的に我慢していかなければ、妖魔を殺戮してしまう。

俺が現れた時には、気を抜いていた時だったのだろう。

一生付き合うことになる傷だ。

傷を治す術は、時間しかない。

湊さんは、とんでもないものを残していった。

俺は感情を押し隠しながら、歩きながら空を見上げる。

「上に、何かあるの?」

「世界は、変わったな」

「そうね」

子鉄が静かにそう答える。

「明日、全てが終わるとしたら、どうする?」

「分らないわ」

考えるまでもなく、答えを出した。

「そうだな」

いきなり問われても、分らないのは確かな話だ。

明日人生が終わるかもしれないというのに、いつも通り、普通に暮らすなんていう平常心を人はもってられるだろうか。

自分は絶対に大丈夫なんていうのは、実感のない人間だけだ。

俺は再び前を向きながら歩く。

向かった先は、龍姫の住処である。