「でさ、気になった事があるんだ」

ポテトをつまみながら、話を切り出した。

「ネロは何処でイヴァンと知り合ったの?」

「故郷」

「そこで、スカウトされたの?」

「そんなところだ」

ネロは自前のフォークとナイフを取り出し、メガロマックを刻んでいく。

「それ、いつも持ってるの?」

「これがないと落ち着かないし、食事の時の習慣だ」

「何か女々しいし、細かーい」

「余計なお世話、だ」

小さく刻んだメガロマックをフォークに刺して口に運ぶ。

「私はねー、イタリアの街で歩いてたらスカウトされた」

「イタリア?」

「旅行中だったわけ」

「人間のようだな」

「妖魔が旅行してちゃいけないなんていうルールなんてないし、それに人間なんて怖くないし、私は外の世界が大好きなわけ」

「悪いとは一言も言っていない」

「ふうん、ネロは人間嫌いってわけじゃなさそうね」

半眼になってはいるものの、怒っているわけではない。

「イヴァンがお前に目をつけるのも、分からなくもない」

「ええ、マジで?」

スラーヴカのポテトを食べてた手が止まった。

「まず、欲望の強さからいっても、他の妖魔よりはお前を選択するだろう」

「見た目が可愛いとか、そんなんじゃないの?」

「見た目は、そうだな、悪くはない」

「もっと素直に表現したらよくない?」

不満がちな表情を作りながら、残り少ないレモンティーを吸い上げる。