「正真正銘、葉桜丞だ」

美咲にいきさつを話した。

「じゃあ、吟さんや郁乃さんは」

「俺の中にいる」

「そうなんだ」

「それよりも、美咲は何でクルトと一緒にいるんだ?」

クルトは里で仕事をしていたはずだし、美咲と絡んだ事もなかったような気がする。

「オラの姉が、イヴァンの側についただ」

何やら事情がありそうだ。

だが、事情を聞いたところで、姉の心境を変えられる程の説得力は存在しない。

なぜならば、相手がイヴァンの仲間だからである。

イヴァンの仲間とはいえ、強い信念めいたものがある。

暴力をもってして、解決を図る方法でしかないのだ。

「止めるつもりか?」

「姉のやってる事は間違ってるだ。だから、オラが止めるだ」

「お前は、お前の家族を傷つける事が出来るのか?」

「出来る」

クルトの目は真剣そのものだ。

しかし、危うくもある。

一つ間違えば、クルト自身が死ぬ可能性があるという事だ。

イヴァンの仲間になったという事は、全てを破壊する事にある。

それは、家族の命さえも厭わないという事だ。

「そうか。美咲もそれに付き合うために来たのか?」

「そうだね。少し、心配だから」

「オラ一人でやれる。余計な世話だ」

「クルトが何と言おうと、手伝うよ」

美咲は微笑む。

しかし、不思議な事がある。

二人は純粋な妖魔で、今の空気の中では暴走してもおかしくはない。

何故、元のままでいられるのか。