「父様、今日は何故西園寺様がおられるのですか?言ってくれれば、手土産でも持ってきたのに」

手土産を持ってくるなんて大嘘。だいたい、鳳家が西園寺家に土産なんてあげる立場じゃない。西園寺家が鳳家にあげるのが正しいのだ。

西園寺家は鳳家に比べたら、・・いや比べ物にならないくらい鳳家は資産家なのだ。
いくら華道界に名を馳せているとはいえ世界に名を馳せている鳳家のほうが立場は上なのだ。


「おお、本題を忘れるとこだったな、荘司」

「しょうじ?」

「西園寺様の名前だよ、私と荘司は高校からの友でね・・」


そうだったの?!と驚きを隠せないのは私だけでなく
西園寺恭冶もだった。

「だから私たちは君たちが同じ高校だということは最初から知ってたさ、黙ってはいたけどね」


「そうだったの、でどうして・・」


あたしはこのディナーに西園寺恭冶がいることが不思議でたまらなかった。

父様と西園寺様が旧友で
同窓会的な感じで会うなら
息子娘はいらないはず・・
そう考えるからだ。


「ああ、鳳家の跡継ぎに恭冶君になってもらおうと思ってね、あ、荘司は納得してるよ」

「は??」


うまく状況が飲み込めない私は口をパクパクさせていた。


跡継ぎを恭冶君にしてもらう?

それって

「父さん!それは僕が麗様と結婚すると言うことですか?家元を継ぐのは僕じゃ?」

「お前は家元より会社経営のほうが向いているだろう、だから家元は弟に継がせる」


怒り爆発寸前なあたしは
公共の場で鳳麗が怒鳴るなどあってはならないと冷静に考え
怒りを沈める。

「私たちが反対したら、この話はなかったことになるのですか?」

「い~や?もう決めたことだからならないよ」

にこっと笑ながら
最悪なことをいう我父に
けりをいれてやりたいと思ったのは
これで何回目だろうか。

つくづく言い方がばからしく、でも有無を言わせないような声音
私は17年間それに逆らえなかった。

「父様ったら、ははは」

「僕はいいですよ。麗様のような美しい方と結婚できるなんて光栄ですし。まあ僕でいいのかは不安ですが」
苦笑いを浮かべながら
この話に賛同する西園寺。