俺は渋々納得した。


「実は俺、早紀ちゃんが好きだったんだ。


まぁ俺には手の届かない憧れだったけどな。


どうにかして付き合いたいと思って思い付いたんだ。


お前を学校一の男にして、そして早紀ちゃんと付き合わせる。


お前は根暗でダサかったけど、背も高くて顔も眼鏡をとれば実はかなり良かった。


その後に何とかして俺が付き合えるようにしようってな。



そして俺の助言でお前と早紀ちゃんは付き合ったのさ。」


俺はそこまで聞いて、顔が怒りで赤くなるのを感じた。


勉はそれを知ってか知らずか淡々と続けた。

「実はさ、お前が早紀ちゃんに別れを告げた時、俺もあの場所でこっそり見てたんだ。


そして、お前が行った後にフラれて泣いている早紀ちゃんに優しくしてやったら、

コロッと手に入っちゃったわけよ。」


まるで武勇伝でも聞かせるかのように得意気に話す勉に、俺の我慢の限界は超えていた。




その時、娘の高い笑い声が聞こえてきた。






俺はしばらく考えてから

「ありがとう。」

とだけ勉に言うと電話を切った。









しばらくは、許してやらない。




でも俺は

お前がいなかったら、変われなかった。



お前がいなかったら、妻と結婚出来なかった。



お前がいなかったら、あの子の『パパ』になれなかったんだ。





ありがとう。







今だから、許そうと思えるよ。











END