“ちょっと来てよ!”


そうあたしを呼び出したのは、その女と友達らしき女。


理由なんて聞かなくても、大体の見当はつくけど。



『…ねぇ、小柳さん。
わかってるわよね?』


『あたし、みぃくんのこと好きなの。
だから、邪魔しないで欲しいんだけど。』


腕を組んだ二人組みが、威圧的な態度であたしを睨む。


あたしは邪魔なんかしてないし、誰がみぃを好きだろうと関係ない。



「…あたしは、みぃの友達だから…」



“友達”


お互いに、それ以上でも以下でもない。


なのに言ってて悲しくなってくるのはきっと、

あたしがみぃのことを好きだからなのかもしれない。


それでもあたしには、強く言えるほどの勇気は持ち合わせては居なかった。



『好きじゃないってことだよね?』


その言葉に、コクリと頷いた。


自分で塗り固める嘘が痛い。


顔を上げることも出来ないまま、あたしは唇を噛み締めた。


視界の端に映るのは、鼻で笑ったように顔を見合わせた女二人。


負けてないと、信じたかった。


みぃは必ず、あたしのところに帰ってくるから。


いつも近寄ってくる女達に、嫌そうにしてたから。



『―――ヒナ発見!
居なくなるからビビったー!!』


そう言いながら、みぃが近づいてきた。


驚くあたしと同じように女達は焦り、

逃げるように“わかったね?”と言葉を残して去った。



『次の数学当てられるから、答え教えてくれる約束じゃん!』



何だ、そーゆーことか。


助けに来てくれたのかと思って、少しだけ期待してしまった自分が馬鹿みたいだった。