『…喉渇いた。』


「―――ッ!」


昼休みの終わりかけ。


必死でノートにペンを走らすあたしは、ゆっくりと声の方に顔を向けた。


呟いている言葉は、だけど明らかにあたしに向けて言っている。


みぃの目線の先には、あたしが机の上に置いていたイチゴジュース。


もちろん、飲みかけのものだ。



「…まだ時間残ってるし、走って購買行きなよ。」



あたしだって社交性はあるから、嫌っていても普通の会話くらいはする。


誰もが返す言葉を、あたしも選んで返した。



『ソレ、ちょーだい。』


その言葉に、あたしは首をひねった。


友達でもないし、ましてや嫌いな男。


それにあたしには、彼氏が居る。


なのに何で、飲みかけのジュースをあげなきゃいけないんだろう。



「…友達に言いなよ。」


『…立ち上がる気力がない。』



チャラい上に、ダメな男だと思った。


女に呼ばれれば立ち上がるくせに。



『…俺も、イチゴジュース好きなんだよね。』


「―――ッ!」


とどめの一言だ。


断ればあたしは、“ケチな人”とか思われるに決まってる。


仕方なくあたしは、机の上に置いていたイチゴのジュースを持ち上げ、

それをみぃの机の上に置いた。



「…あげるよ、もぉ!」


半分はヤケクソだ。