「ままま、そう言わないで。あとちょっとなのよ」

しかし、瑠璃は全く気にして無いようで、あっけらかんと言い放った。
日向子たちは「え……」と絶望的な声をあげる。
三人は思っていた。
いくら瑠璃姉ぇでも、本気で抗議すれば止めてくれるはずだ、と。
―――『諦める』などという単語は瑠璃の中に存在しないのも知らずに。

「偉大な研究には、苦労は付き物よ??」

瑠璃は爽やかな笑顔だった。
にっこりという効果音が付いていた。
日向子たちは恐怖にひきつっていた。
――笑顔が怖い。
それはまさに、彼女の為にある言葉なのだと日向子たちは思った。
壱哉は後に語る。
「女性が怖いと思ったのはあの時が初めてだね…」

「……さ、早くいきましょ!!もうすぐ夕暮れになっちゃう」

何も言わないのを了承と取った瑠璃は、また前を向いて歩き出した。
三人はトボトボと重い足取りで着いていった。
その後ろ姿は、ひどく、切ないものだった。