第一章;不思議




「ねぇ?瑠璃姉ぇ??一つ聞いていい??」

日向子は首に掛かるタオルで汗を拭きながら前を歩く瑠璃に言う。

「なぁに~??」

瑠璃は後ろを振り返らずに言葉だけ投げ掛けた。

「………の」

「え??」

「…………んの」

「何??聞こえないよ」

「なんでウチたちは山登りしてんのかって言ってんの!!!!!!!!」

これでもかっと言うぐらいに発した声は、森をこだました。
瑠璃は驚いて後ろを振り替える。
日向子のうしろにいる佑哉と壱哉はもう声も出ないらしく目線で同意を示した。

そう、今彼らがいるのは、見渡す限り緑だらけの「森の中」。
日向子の手には時計が巻かれていないため正確な時間は分からないが、時刻はだいたい4時頃。
あと何時間もすれば夕暮れになってしまう。

「朝の7時に「遊びに行こう」とたたき起こされて、どこに向かうかと思えば島の最東部で?あたり一体森しか無いからおかしいな、と思いながらも付いてきたら………」

日向子は息を吸うと、一気に吐き出した。
「いつまで歩くんだよ!!!日ぃ暮れるよ!!……もう帰ろう!?帰って別荘で遊ぼう!!瑠璃の好きなのでいいからさ!!??」

溜め混んでいたものを一気に吐き出し、日向子は肩で息をしながら言った。
佑哉と壱哉が隣で相づちを打つ。