「ねぇねぇ。『恋愛詩人』って、本当に居ると思うー?」

そう、長い茶髪の女の子は唐突に言ってきて。

私は彼女の言葉のある単語に耳を傾けた。

『恋愛詩人』。

最近女性の中で凄く噂になっている、その人物。否…人ではないが。

何でも、世界中の人間の恋愛を詩にして書き残す妖精だとか。

「さぁ?判んないけど、居たら素敵だよね」

と、私は答える。

そんなファンタジーな生物が存在するのかは半信半疑だが、憧れではある。

人の恋愛を、人の想いを、詩にして表現する―――。

私は恋愛をしようとは思わないけれど、恋愛話は大好きだからそう言うのには心の底から尊敬する。


けれど…それは全部、只の噂。

詩を書かれた人達は、その後、いつの間にか、自分達の恋愛の詩が書かれた紙が側に置いてあっただけで。

誰も、『恋愛詩人』を見た事は無いらしい。

「だよねだよね!もし居たら詩を書いて欲しいな~♪」

「それは彼氏が出来たら言う言葉でしょぉ~?」

「そうでしたっ☆」

…と、いつも通りの会話をしてから私は学校を後にした。