―――やっとついた…。

夜の公園。

此処から綺麗に見える景色を、二人で良く眺めていた、あの高台に向かって私は走る。

「はぁっ、はぁっ…」

息が荒くなっているのも気にせず、ただ走る。

彼がいる事を信じて―――。


――走っていると、高台が見えてきて、それがだんだん大きく見える。

そして足を止めて前を見れば…

貴女の後ろ姿があった。

「悠太っ…」

叫ぶように声をかけると、悠太はこちらに振り向く。

「…何だ、お前か…。何だよ?」

彼は刹那の間だけ目を大きく見開き、すぐに私を睨み付ける。

その彼に、私は駆け寄る。

「…お前、何なんだよ…!?俺が嫌ってんの判ってる癖にっ…。」

そんな怒鳴るような彼の言葉を無視して――――――

私は彼に、抱きついた。

「悠太、大好きだよ…」

そう耳元で囁く。

そして悠太の頬にキスをする。

これは私と悠太が付き合い始めた時に、私が悠太にされた事。

「…放せよ……」

優しげな声でそう言われて。

私は思わず彼の体を放して、俯く。

―――そっか。もう貴女の中に私は完全に居ないんだね……。

そう失望しかけた時――――


悠太に、唇を押し付けられた。

「んぅっ…」

上手く息が出来ない。

苦しい……

「ははっ」

唇を放して、悠太は突然笑い出す。

「俺もだよ、ユキ」

その無邪気な笑顔は、とても懐かしかった。

…良かった……。

思い出してくれたんだ………。

その夜は、幸せな気分で満月を眺めた――――。