―――私の大切な人は、ある事故で記憶を失った。

頭を激しく打ち、数ヶ月の眠りに陥り、目覚めた貴女は―――


――空っぽだった。


性格は、昔も今も、全く変わらない。

違うのは、私を嫌っている事。

昔はあんなに、あんなに仲が良かったのにっ…。

そして、何も覚えていない事。

家族も、友人も、私の事も……
皆貴女の中には居なくて。

失われた記憶。

失われた思い出。

未だに彼は取り戻していない。

嫌われてる私は、貴女にどうする事も出来なくて。

貴女の彼女だった事も、伝える事も出来なくて。

取り戻させてあげたいのに、無力な自分を悟るばかり。

あんなに大好きで、気が付けばいつも隣に居た貴女が―――


――今は、とても遠くに居る気がする。