実際には弥太郎は父が倒れる場面を見ていない。 だから初めて見る。 父が倒れる場面を。 そして苦しそうな父を。 「ック……」 弥太郎の目からは大粒の涙が流れる。 どんなに窓にしがみついても弥太郎の声は聞こえないし、届かない。 どんなに傍に駆け寄って、僕は、ここにいるよ。って言いたくても言えない。 「お父さんっ……」 弥太郎の悲痛な叫びばかりが辺りに響く。