空が今回手渡したのは、珍しく表紙のある絵本だった。 「これ……、下書き?」 ただ、表紙は鉛筆らしきものでかかれていた。 そして何度も線を引いたのか、どれが本当の線か分からないほどになっている。 「これは作者死亡の未完成な絵本です」 ハッとその場の空気がかわる。 「そして、死期を悟った、父から、我が子への手紙のようなものでもあります」 潤も緒方も絵本を開けないでいた。