時は夜。

吾が輩は少しばかり気が向いて、寄り道をしたのである。


本来ならば、まっすぐに終という素晴らしい方のところへ行くつもりであった。


が、気になる人物を発見したのである。





「亜蓮、元カノのこと頼んで平常心ってどうかしてるよ」

開いた窓から部屋を覗き見ると、寧々という暴力女が亜蓮の家に来ていたのである。


ちなみに亜蓮の家は、終の家に行く通り道である。



吾が輩は、窓のところから盗み聞きをすることにした。

猫なので、犯罪にはならないのがポイントである。

しかし人間とは、規則が好きな動物であるな。



「好きなんでしょ、元カノのこと」

「別に」

「嘘は泥棒の始まりだぞー」


なにやらジュースやお菓子を手に、寧々が亜蓮をからかっている最中であった。

しばしば、このような光景は目撃される。



「しかも、なっちに頼むとかバカなんじゃないの。
あのコ、けっこう油断できねぇぞ」

「それは、おまえの意見だろ」

「……まぁ、ね」