黒蓮華とは、あの吾が輩を追いかけ回す人間や

遊ぶふりをして吾が輩を走り回らせる人間や

机に乗った吾が輩を容赦なく床へと落とす恐ろしい人間がいる

地獄のような場所であるな?



確か順に名前を、風音、牡丹、黎緒といったな。

まったく動物に不親切な連中である。



「亜蓮さんが、本当に好きだった人……なんだよなぁ」

それより、凪兎はいったい何故難しい顔をしているのか。


「いや、“好きだった”じゃなくて“好き”なのか」

まったく、思考回路の予想がしにくいものである。



話に飽きて、その場を離れようと動き出す。


「おいクロ、どこ行くんだよ」

呼び止められて、仕方なく振り返って鳴いてみせると


「わかったよ、行ってらっしゃい」

あきらめたように、凪兎は笑った。



まだ何か言いたかったようである。

吾が輩が思うに、そんなにゆずゆとやらが気になるのなら気にしていれば良かろう。


別段、誰も文句など言わないと思うのである。

さて、そろそろ散歩の時間である。