「ちょっと通して!」
「どいて。」
野次馬を押しのけて、騒ぎを聞きつけた結城兄と柚兄が走りよって来た。
「結、なにもされてないか?」
「大丈夫か?」
もう先輩も反省しただろう…。
「大丈夫だよ?」
笑顔で返す。
「まあ、殴られてたけどね…。」
ぼそっ、と美里ちゃんが私の声真似で呟く。
その瞬間二人の顔が般若と化した。
バアァァンッ……。
二人の拳と壁の間から発せられた廊下を響き渡る音。
か…壁がへこんでる…。
「「次、結に手出したら殴るよ?」」
先輩たちは数分間ただただ大粒の涙を見開いた目から流し、逃げだした。

