「大変です」 見た目にはわからないけど、焦ったような雰囲気で彼女の神南(カンナ)は俺のところに来た。 …甘い匂いを纏わせながら。 この匂いがあまり好きじゃない俺は若干引きぎみに、でも笑顔は崩さず「どうした?」と言葉をかけた。 相変わらず見た目にはわからないが、やはり神南は焦ったように机を指差した。 正確には、机の上のケーキ。 朝から神南が俺の部屋で、チョコレートの匂いを部屋中にただよわせながら作っていたものだ。