「先輩…どうしてまだ学校にいたんですか?」
クラスの人は「すぐに帰った」って言ってたのに。
夕焼けがさしこむ廊下を、先輩に手を引かれながら歩く途中で聞いた。
すると、先輩は「忘れ物して取りに来た」と簡単に言った。
そして「急いだ意味なかったけど」とも言って笑った。
先輩には急ぎの用事があった。
でも、忘れ物をしたから学校に戻った。
それだけだった、んだよね…
本当に偶然だったことに少し落ち込む。
「…でも、戻ってきてよかった。いや、それ以前に帰らない方がよかった、かな」
先輩の言葉に「何でですか?」と疑問を口にした。

